重要事項調査報告書に載る項目:滞納額・積立金・修繕計画・使用制限
管理会社が作る重要事項調査報告書には、管理費・修繕積立金の滞納額、積立金の残高、長期修繕計画、大規模修繕の実績と予定、ペットや民泊などの使用制限が載ります。各欄の中身と注意点を公的資料で整理します。
中古マンションの購入では、仲介会社が管理会社に依頼して、管理に係る重要事項調査報告書を取り寄せます。この報告書には、売主が負担する管理費・修繕積立金とその滞納額、管理組合の収支、長期修繕計画の有無、過去10年の大規模修繕、次の工事の予定、ペットや民泊などの使用制限が載ります。滞納額が買主に請求されることがある点と、修繕の実績が原則として過去10年分に限られる点は、読む前に知っておきたい内容です。
この記事は、書類のつくりと各欄の読み方を扱います。管理費や修繕積立金の仕組み、取り寄せる書類の一覧は管理費と修繕積立金の記事にあります。
調査報告書は管理会社が作る書類
宅地建物取引業法35条と施行規則16条の2は、マンションの売買で仲介会社が説明する事項を定めています。この中には、積み立てられている修繕積立金の額、通常の管理費の額、維持修繕の実施状況の記録、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めが入っています(施行規則16条の2)。
管理の情報は管理組合が持っているため、仲介会社は管理会社に調査を依頼します。管理会社の団体であるマンション管理業協会は、報告書の作成ガイドラインと様式(2022年4月版)を公表しています。ガイドラインは、情報を開示するには管理組合の承諾が必要で、管理組合によっては提供する項目に制限があることも示しています。管理会社が把握していない項目は「該当なし」「不明」「情報提供不可」と書かれます。
報告書の書式は管理会社によって違うので、手元の報告書がこの様式と同じとは限りません。ここでは様式3の欄に沿って説明します。
管理費・修繕積立金の滞納額と、買主の負担
様式では、売主が負担している管理費、修繕積立金、修繕一時金、駐車場使用料などの月額と、それぞれの滞納額を書きます。滞納があれば遅延損害金の有無とその額も書く欄があります。管理組合全体の滞納は、収支の欄に管理費滞納額と修繕積立金滞納額として別に載ります。
滞納額は、売主の個人の借金として片づくとは限りません。区分所有法は、管理組合が区分所有者に対して持つ債権(管理費や修繕積立金の請求)を、区分所有者の特定承継人、つまり部屋を買った人にも行使できると定めています(区分所有法7条・8条)。不動産適正取引推進機構の「不動産売買の手引」のマンションの説明書の参考例にも、滞納がある場合は新しい所有者に請求できること、売主の責任で払われ、決済時に払われたことを確かめるべきことが書かれています。
標準管理規約(国土交通省、令和7年改正の単棟型)の60条は、期日までに納めない組合員に、年利の遅延損害金と、弁護士費用、督促や徴収の費用を加えて請求できるとしています。報告書に滞納が載っていたら、買主は金額と、決済までに売主が払う扱いになっているかを仲介会社に尋ねます。
修繕積立金の残高と収支は直近の決算から転記される
様式の収支の欄は、管理費会計と修繕積立金会計の収入総額、支出総額、繰越額、資産総額、負債総額を書きます。数字は、直近の総会で承認された収支報告書と貸借対照表から、千円単位で転記する決まりです。予算の欄には、調査依頼日が属する年度の予算(総会承認済み)が入ります。管理組合に借入金があれば、残高も載ります。
積立金の総額は、修繕積立金会計の繰越額や資産総額で読み取れます。ただ、この数字だけでは、積立金が足りているのかは分かりません。足りるかどうかは、計画している工事費の累計と積立額の累計を比べる必要があり、その表は長期修繕計画書の収支計画にあります。
長期修繕計画と大規模修繕の実績・予定
様式の「大規模修繕計画関係」の欄は、三つのことを書きます。長期修繕計画の有無(総会で承認された年月、作成または見直しの時期、理事会で検討中かどうか)、過去の共用部分の修繕の実施状況、これからの大規模修繕工事の実施予定です。
実施状況に載るのは、管理組合が一定年数ごとに計画的に行った大規模修繕で、原則として調査依頼時点から10年さかのぼった分です。対象の部位は、屋根、外壁、内壁、ベランダ、鉄部、給水管、排水管、電気幹線、ガス配管、エレベーターなどです。10年より前の工事は載らないことがあるため、築年数の古い棟で工事の記載がなくても、工事をしていないとは言い切れません。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)は、計画期間を30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とし、5年程度ごとに見直すとしています。計画の収支は、推定修繕工事費の累計額を、修繕積立金の累計額が下回らないように組むものです。大規模修繕の年度に積立金が一時的に足りなくなる場合は、一時金や借入れで補うと書かれています。報告書の「修繕一時金」の変更予定の欄と合わせて見ると、一時金の予定を確かめられます。
ガイドラインの標準様式にある修繕周期の例では、外壁塗装などは12〜15年です。これは記載例で、実際の周期は建物の仕様や劣化の調査で決まります。
管理規約の使用制限:用途・ペット・専有部分の工事
様式7は、専有部分の使用規制を書く欄です。専有部分の用途は、住宅専用で住宅宿泊事業(民泊)が可能、住宅専用で不可、住宅以外も可、の三つから選びます。標準管理規約12条も、住宅宿泊事業を認める場合と禁止する場合の2通りの条文例を示しています。ペットの飼育制限、専有部分内工事の制限、楽器など音に関する制限は、それぞれ有無と該当する規約の条文を書きます。一括受電方式で各住戸が電力会社と個別に契約できないマンションは、その旨も書く欄があります。
ペットについて、標準管理規約のコメントは、飼育を認めるか認めないかは規約で定めるべき事項で、手続きの細部は使用細則に委ねられるとしています。報告書に「ペット飼育制限:有」と書かれていても、禁止なのか、頭数や大きさの制限つきで認めているのかは、規約と使用細則を読まないと分かりません。
専有部分の工事は、標準管理規約17条で、共用部分や他の専有部分に影響するおそれのある修繕等を、あらかじめ理事長に申請して書面で承認を受ける形が示されています。リフォームを考えている買主は、承認の手順と申請に必要な書類を、報告書とは別に規約で確かめる必要があります。
報告書の日付より新しい情報は、議事録と長期修繕計画書にある
報告書の情報は、調査依頼の時点のものです。収支は直近の総会で承認された決算なので、その後の理事会の検討は反映されていない可能性があります。様式の変更予定の欄は、総会で承認されたか、上程が決まっているものと、理事会で検討されているものを区別して書きますが、「把握できているものに限る」という但し書きがあります。
手引の説明書の参考例も、総会で正式に決まっていなくても、大規模修繕や管理費等の値上げが理事会などで検討されていることがあると書き、仲介会社だけでなく売主にも直接尋ねるよう勧めています。直近の総会議事録と理事会議事録、長期修繕計画書を合わせて読むと、報告書の欄の背景が分かります。
様式の最初には、管理計画認定の有無と認定取得日の欄もあります。認定は取得日から5年間有効という注記があるので、認定があるなら取得日も見ておくと、有効期間の残りが分かります。気になる棟は棟一覧、売り出されている部屋は売出し一覧から探せます。
※資料は2026年10月4日時点の国土交通省、e-Gov法令検索、不動産適正取引推進機構、マンション管理業協会(2022年4月版)のものです。報告書の様式と記載内容は管理会社や管理組合によって異なり、個別のマンションの状態を保証するものではありません。当サイトの集計は売出し価格ベースで、成約価格ではありません。実際の書類を読み、専門家の説明を受けて、ご自身の判断で進めてください。