タワマン高層階の揺れと長周期地震動。免震・制震の見分け方
長周期地震動は震度が小さくても高層階を大きく揺らします。気象庁の階級1〜4の内容、国土交通省の2016年の対策、免震と制震の違い、購入前に棟の構造を調べる方法をまとめました。
高層階は、遠くで起きた大きな地震でも、震度の数字以上に揺れることがあります。ゆっくりとした周期の揺れ(長周期地震動)が高層ビルの固有周期と重なるためです。気象庁は2023年2月1日から、この揺れの強さを「階級1〜4」で予測し、階級3以上なら緊急地震速報を出しています。購入前には、棟が免震か制震か、いつの基準で設計されたかを資料で確かめられます。
長周期地震動は遠くまで届き、高層階で増幅される
気象庁によると、長周期地震動は大きな地震で生じる、揺れが一往復する時間の長い揺れです。短い周期の揺れに比べて弱まりにくく、震源から数百km離れた場所まで届きます。柔らかい堆積層に覆われた大きな平野では、さらに増幅されます。気象庁:長周期地震動の特徴
同じ資料は、東北地方太平洋沖地震で大阪の震度が3だったのに、高層ビルが大きな被害を受けた例を挙げています。震度が小さくても高層階が大きく揺れることがある、というのがこの現象の要点です。
長周期地震動階級1〜4の内容
気象庁の長周期地震動階級は、固有周期がおよそ1.5秒から8秒の一般的な高層ビルを対象に、人の行動のしにくさや家具の動きから揺れを4段階に分けたものです。階級は、絶対速度応答スペクトルという値の範囲で決まります。階級1が5cm/s以上15cm/s未満、階級2が15cm/s以上50cm/s未満、階級3が50cm/s以上100cm/s未満、階級4が100cm/s以上です。気象庁:長周期地震動階級と解説表
| 階級 | 人の体感・行動 | 室内の状況 |
|---|---|---|
| 1(やや大きな揺れ) | 室内のほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる | ブラインドなど吊り下げものが大きく揺れる |
| 2(大きな揺れ) | 物につかまりたいと感じる。つかまらないと歩くことが難しい | キャスター付き什器がわずかに動く。棚の食器類や本が落ちることがある |
| 3(非常に大きな揺れ) | 立っていることが困難になる | キャスター付き什器が大きく動く。固定していない家具が移動し、不安定なものは倒れることがある |
| 4(極めて大きな揺れ) | 立っていることができず、はわないと動けない | キャスター付き什器が大きく動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある |
気象庁はこの表について、示された現象がすべて起きるわけではなく、これより大きい被害や小さい被害になることもあると断っています。階級は地表の観測から高層ビルの揺れを推計したもので、個々の建物の特性や地盤までは表していません。建物の頂部では、発表した階級より揺れが大きくなる場合もあります。
緊急地震速報と観測情報
緊急地震速報は、震度5弱以上を予測したときに加え、2023年2月1日から長周期地震動階級3以上を予測したときにも出ます。両者は区別せずに発表され、取るべき行動は同じだと気象庁は説明しています。気象庁:緊急地震速報の発表基準の変更
地震のあとには、震度1以上を観測した地震で階級1以上を観測した場合に「長周期地震動に関する観測情報」が出て、地域ごとの最大階級や観測点ごとの階級が分かります。気象庁:観測情報
国土交通省の2016年の対策と、2017年4月の区切り
国土交通省は2016年6月24日に、南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策を地方公共団体などに通知しました。対象は高さが60mを超える建築物と、地上4階建て以上の免震建築物です。2017年4月1日以降に申請する性能評価に基づく大臣認定から、長周期地震動を考慮した検討を求める運用になりました。免震建築物と鉄骨造の建築物では、長時間の繰り返しによる累積変形の影響も検討します。対象地域には関東地域(東京を含む)が入っています。国土交通省:報道発表
既存の超高層建築物については、設計時に想定した地震動を上回るおそれがあるときに、所有者が自主的に検証や補強を行うことが望ましい、という位置づけです。
つまり、この運用が適用されるのは2017年4月以降に申請された案件です。それ以前に認定を受けた棟は対象外で、申請から竣工まで数年かかるため、竣工年だけでは区別できません。個別の棟については、購入を考えている人が、設計時に長周期地震動をどう検討したかを資料や仲介会社で尋ねることになります。
免震は建物と基礎の間、制震は建物の中に装置を置く
日本免震構造協会の資料では、免震建物は、積層ゴムなどの支承材で建物の荷重を支え、地震の揺れをかわして、ゆっくり揺れる構造とされています。制振(制震)建物は、筋かい、壁、間柱に制振装置を取り付け、装置が地震エネルギーの一部を熱に変えて吸収し、揺れを小さくする構造です。日本免震構造協会パンフレット
免震は建物と基礎の間に装置を置き、制震は建物の中に装置を組み込む、という違いです。どちらも家具が倒れにくくなる効果を挙げていますが、長周期地震動に対してどこまで効くかは、装置の種類や設計で変わります。免震か制震かだけで強さは決まらないため、買う側は、設計で長周期地震動を考慮したかも合わせて聞いておくと判断しやすくなります。
棟の構造を調べる資料と窓口
当サイトの棟データには、免震・制震の別を載せていません。購入を考えている人は、次の資料や窓口で棟ごとに調べられます。
- 分譲時のパンフレットや販売図面。構造として免震装置や制震装置の記載があるか。
- 住宅性能評価書。日本住宅性能表示基準には、評価対象が免震建築物かどうかを示す項目があります。ただし評価書を取得していない棟もあるため、ない場合は他の資料で確かめる必要があります。国土交通省:日本住宅性能表示基準
- 管理会社や管理組合。竣工図、長期修繕計画に、免震装置の点検や制震ダンパーの更新が入っているかを聞けます。
- 仲介会社を通じた書面での回答。重要事項説明の前に、構造の種類と設計時の地震動の扱いを質問しておくと、説明の場での聞き漏らしを防げます。
築年が古い棟ほど、設計の前提が現在と異なる可能性があります。修繕や設備更新との関係は、築20年超のタワマンの記事で扱います。
高層階の家具の置き方
東京消防庁の専門委員会の報告は、東日本大震災後のアンケートで、15階以上の建物では11階以上から家具の移動が目立って増えたと整理しています。そのうえで、概ね10階以上を高層階として、納戸やクローゼット、据え付け収納に家具を集めて、生活空間に家具を置かないことを勧めています。東京消防庁:長周期地震動等に対する高層階の室内安全対策
構造に関係なく、固定していない家具やキャスター付きの家電は動きます。内見のときに収納の量と造り付けの有無を見ておくと、入居後の家具の置き方を考えやすくなります。
水害や停電、エレベーター停止への備えはハザードマップの記事に書きました。売出し中の棟は棟一覧から探せます。
※公式資料は2026年10月確認。階級の内容や国土交通省の運用は今後変わることがあります。本記事は個別の建物の耐震性や安全性を評価するものではありません。構造や設計については物件資料と専門家の説明を確認し、ご自身の責任で判断してください。