湾岸の再開発、いまどこまで決まっているのか
湾岸のマンションを探していると、必ず「再開発」の話が出てきます。 ただ、その話の確からしさはバラバラです。すでに人が住んでいる建物の話と、 まだ着工日も決まっていない構想の話が、同じ「再開発」という一語で語られます。 不動産の広告で「将来性」と書かれているものが、どちらなのかは書かれていません。
この記事では、勝どき・月島・晴海・豊洲・有明・東雲の6町域と築地の再開発を、 確度の高い順に5段階へ分けて並べます。すべて出典を付けました。
確度の5段階
| 段階 | 意味 |
|---|---|
| ① 完成 | 建物が建ち、もう使われている |
| ② 工事中 | 着工済み。竣工の予定時期が公表されている |
| ③ 決定 | 事業者と計画は決まったが、まだ建っていない |
| ④ 構想 | 行政が検討している。着工の時期は未定 |
| ⑤ 報道のみ | 当事者の公式発表がなく、報道や観測にとどまる |
③から下は、時期も中身も変わることがあります。買う判断の材料にするなら、 ②までを「ほぼ確実」、③を「たぶん来る」、④と⑤は「来たらうれしい」くらいの 重みで見るのが無難です。とくに④と⑤を前提に価格を判断すると、外れたときの 振れ幅が大きくなります。
時期の距離感も、あわせて見ておいてください。
住戸が増える話は2020年代のうちに片づきます。一方、築地と臨海地下鉄という 「湾岸の風景を変える」と言われている2つは、2030年代の後半から2040年頃の話です。 同じ「再開発」でも、効いてくる時期は10年以上ずれています。
① 完成 ── この3年で湾岸に増えたもの
いちばん大きいのは晴海フラッグです。東京2020大会の選手村跡地に建った 5,632戸の街で、2025年9月に最後の街区「SKY DUO」が竣工し、全24棟がそろいました (東急不動産「HARUMI FLAG SKY DUO 竣工」2025年9月19日)。 中央区の資料でも晴海地区は再開発の「完了地区」に分類されています。晴海の再開発は、 これから始まるのではなく、もう終わったところです。
完成後のHARUMI FLAG(2026年1月)。中央奥が、最後に完成したSKY DUOのツインタワー。写真: Souka Kinmei / CC BY 4.0(当サイトでトリミング/リサイズ)
月島では、グランドシティタワー月島(58階建)が2026年5月に竣工しました。 入居が始まるのは今月下旬からです (東京都都市整備局「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業」)。 勝どきでは、パークタワー勝どきのサウス棟とミッド棟が2023年8月に完成しています。
住宅以外も動きました。豊洲市場の場外に「豊洲 千客万来」が2024年2月に開業。 有明では、テレビ朝日の劇場・ホール施設「東京ドリームパーク」が2026年3月27日に開業し (Impress Watch)、 有明親水海浜公園の砂浜と水域が2026年4月に一般開放されました (東京都報道発表 2026年4月23日)。
そして、いちばん直近の話です。2026年9月16日から、東京BRTが東京駅まで延びます。 晴海フラッグを出て、築地場外市場・東銀座を経由し、東京駅八重洲へ向かう新しいルートです (東京都報道発表 2026年8月28日)。 所要時間は東京駅八重洲まで29分、運賃は大人250円と案内されています (東京BRT公式サイト)。
ただし、当面の本数は1日34便で、時間帯は9時から17時、1時間あたり1〜2便です(同報道発表)。 朝夕の通勤の主役になる水準ではありません。晴海と勝どきの弱点は「駅が遠い」ことでしたが、 それが解消されるというより、日中の都心方面の選択肢が1つ増える、というのが実際のところです。
② 工事中 ── 2029年までに約4,600戸
いま工事中の再開発を合わせると、2026年から2029年にかけて約4,600戸が新しく増えます。 晴海フラッグ1つ分(5,632戸)には届きませんが、それに近い量です。
単独でいちばん大きいのは、豊海町の「THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY」です。 53階建てのタワー2棟で、2027年3月に工事完了の予定 (東京都都市整備局「豊海地区第一種市街地再開発事業」)。 豊海町は勝どき駅から歩く海沿いの一角で、これまで大規模なタワーがなかった場所です。
建設中のTHE TOYOMI TOWER MARINE&SKY(2026年1月)。手前は中央区立豊海小学校。写真: Souka Kinmei / CC BY 4.0(当サイトでトリミング/リサイズ)
このほか、月島では「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(48階建)が2028年6月完了予定です (東京都都市整備局「月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業」)。 勝どきでは、パークタワー勝どきの街区に残っていた最後の1棟(B棟)が2026年4月に着工しました。 竣工は2029年5月の予定と報じられています(健美家。 都の資料では事業全体の完了予定を2028年10月としており、時期の見方に幅があります)。
大事なのは、増える場所が勝どき・月島・豊海の3地区に固まっていることです。 湾岸全体に薄く広がるのではなく、隣り合った狭い範囲に集中します。
交通も工事中のものがあります。有楽町線の豊洲〜住吉延伸(豊住線)は2024年11月に着工しました。 開業の目標は「2030年代半ば」で、具体的な年は公表されていません(東京メトロ)。 羽田空港アクセス線も工事中で、2031年度の開業を目標としています(JR東日本)。
③ 決定 ── 築地市場跡地。ただし着工はこれから
湾岸でいちばん規模の大きい計画が、築地市場の跡地です。 三井不動産を代表企業とする「築地まちづくり株式会社」が事業者に決まり、 2025年8月に基本計画が公表されました (中央区「築地地区まちづくり事業の基本計画策定について」)。
- 約19万㎡の都有地に、超高層7棟を含む9棟
- 中心は、約5万人を収容できる全天候型の大規模集客施設
- 事業費はおよそ9,000億円
- 2026年度に基盤整備に着手、超高層棟は2028年度着工の予定
- 第1期の完成が2032年度、全体の完了は2038年度の見通し
更地になった築地市場跡地(2019年9月)。隅田川をはさんだ対岸が勝どき。2026年9月の時点でも、建物の工事は始まっていない。写真: Zengame / CC BY 2.0(当サイトでトリミング/リサイズ)
ここで注意したいのは、2026年9月の時点で都市計画決定がまだ済んでいないことです。 事業者と計画の中身は決まっていますが、法的な手続きはこれからで、まだ何も建っていません。 築地は勝どき・月島から橋を1本渡った先です。完成すれば影響は大きいものの、 効いてくるのは2030年代の話になります。
なお、約5万人という規模と、事業者に読売新聞グループ本社が入っていることから、 「巨人の新しい本拠地になるのでは」という見方がよく語られます。 ただし読売新聞社側は「移転ありき」の計画ではないという立場をとっており、 球団としての正式な発表もありません。 専門家からは「本拠地移転に偏った報道には違和感がある」として、 野球以外にも使う多目的施設として見るべきだという指摘も出ています (JBpress)。 スタジアムが建つことは③、巨人が来ることは⑤。同じ計画の中でも段階が違います。
築地では、もう1つ小さな事業も動いています。築地二丁目地区の再開発(20階建てのオフィス)は、 2026年7月29日に権利変換計画が認可されました (日鉄興和不動産)。
④ 構想 ── 臨海地下鉄は「2040年頃」
湾岸の物件を見ていると、必ず名前が出るのが臨海地下鉄です。 正式には「都心部・臨海地域地下鉄構想」といい、東京駅から新銀座・新築地・勝どき・晴海・ 豊洲市場を通って有明・東京ビッグサイトへ至る、約6kmの新しい地下鉄です。
2024年2月に、東京都・鉄道建設運輸施設整備支援機構・東京臨海高速鉄道の3者が 事業計画の検討で合意しました (東京都報道発表 2024年2月2日)。 2026年度の都の予算には、ルートを詳しく詰めるための調査費が計上されています。
ただし、開業の目標は東京都の資料で「2040年頃」、着工は2030年頃の想定です (東京都都市整備局)。 都市計画決定も環境影響評価も、まだ済んでいません。いま30代で家を買う人にとっては、 子どもが独立するころの話です。「駅ができるから」を今の価格の理由にするには、まだ遠い計画です。
ここで1つ、はっきりさせておきたい話があります。 湾岸の物件紹介で「ゆりかもめが勝どきまで延びる」と語られることがありますが、 この構想は2016年の交通政策審議会の答申で検討の対象から外れており、事実上白紙です。 中央区も2014年に地下鉄新線の誘致へ方針を切り替えています (乗りものニュース、中央区)。 いま進んでいるのは、あくまで上の臨海地下鉄のほうです。
このほか東京都は、ベイエリア全体の長期構想として「東京ベイeSGプロジェクト」を進めています。 こちらは2040年代を見据えた枠組みで、個別の建物の話ではありません。
⑤ 報道のみ ── 晴海と有明に残る、計画未公表の空き地
最後は、いちばん確度の低い段階です。ここに入るのは「土地が動いたことは事実だが、 何が建つかは誰も公表していない」話です。
晴海二丁目の約1.9万㎡。 かつて晴海フラッグの販売センターがあった空き地です。 太平洋セメントが2026年7月21日に譲渡を議決し、8月26日に引き渡しを完了、 譲渡益はおよそ187億円と発表しています (日経不動産マーケット情報)。 ここまでは会社の開示にもとづく事実です。 一方、買ったのが三井不動産で、マンション用地としての活用を検討している、という部分は Bloombergの2026年8月27日の報道 によるもので、三井不動産からの正式な発表はありません。 戸数も高さも時期も、まだ何も決まっていません。
有明北2-1街区の約8,900㎡。 住友不動産が2022年にUR都市機構の入札で およそ128億円で落札した土地です(UR都市機構の公表資料)。 落札は公表された事実ですが、そこに何を建てるかは4年たった今も公表されていません。
このほか、佃二丁目の再開発計画は2019年に準備組合設立が報じられましたが、 その後の進捗を示す公的な情報が見当たりません。計画が続いているのかどうかも、 外からは判断できない状態です。
湾岸ライフのデータで見ると
再開発が相場にどう効くかは、晴海が実例を見せてくれています。
当サイトが集計している湾岸6町域のタワーマンション58棟で、 2026年9月4日時点の売出しは1,193件。このうち晴海が429件で、 全体のおよそ3分の1が晴海1町に集まっています。晴海のタワーは13棟で、 棟数でいえば2割ほどしかありません。割安と判定した物件で見ても、 全200件のうち75件が晴海です。
理由ははっきりしています。晴海フラッグのタワー2棟(PARK VILLAGEとSUN VILLAGE)だけで、 売出しが128件あるからです。竣工から1年ほどの2棟が、湾岸全体の売り物件の1割を出している計算になります。 大量に供給された街では、住み替えや投資の売却が同じ時期に重なります。 新しい街ほど、買い手にとっては選択肢が多く、売り手にとっては競争相手が多い状態になります。
この現象が、次は勝どき・月島・豊海で起きます。②で見たとおり、 2027年から2029年にかけて、この3地区に3,000戸以上が加わるからです。 月島の売出しはいま45件しかありません。ここに数百戸単位の新築が入ると、 中古の売り出し方も変わってきます。
逆に、供給の予定がない町域もあります。豊洲・有明・東雲は、 確度②までの新規の大型住宅供給が今回の整理では見当たりませんでした。
まとめ ── どの段階の話をしているのか
- いま効いている: 東京BRTの東京駅延伸(2026年9月16日)、晴海フラッグの大量供給
- 数年以内に効く: 豊海・月島・勝どきの約4,600戸、有楽町線の豊住線
- 2030年代の話: 築地市場跡地、臨海地下鉄
- まだ何も決まっていない: 晴海二丁目と有明北の空き地
「湾岸は再開発で伸びる」という言い方は、この4つを1つに混ぜています。 物件の説明を受けるときは、その再開発がどの段階なのか、 都市計画決定は済んでいるのか、着工日は出ているのかを聞いてみてください。 答えられない話は、④か⑤です。
当サイトの今日の動きでは値下げと新着を毎日集計しています。 供給が増える町では値下げの頻度が上がりやすいので、 勝どき・月島の動きは2027年以降、意識して見ておくと参考になります。
※ 各事業の内容・時期は、記事中に挙げた2026年9月時点の公表資料と報道にもとづく概算です。 再開発の計画は変更・延期されることがあります。 当サイトの相場は売出し価格ベース(成約価格ではありません)で、割安度は統計モデルによる推定です。 売買の判断はご自身の責任でお願いします。